半導体産業における日本勢の盛衰要因を探る:システムアーキテクチャの視点から

今年読んだドキュメントの中でもっとも勉強となったのはこの中馬宏之先生の大作です。
半導体産業における日本勢の盛衰要因を探る:システムアーキテクチャの視点から 改訂版
初版
このようなマクロ的抽象的な視点から、ロージカルな分析、それから歴史絵巻ような経緯説明までの解説する手法が大好きです。

自分は半導体産業に関する経験が全くがないけど、
ただ一システムアーキテクトやソフトウェア開発者の視点から大変有益な情報と気付きを頂きました。

今自分がいるインターネット業界でも同じことが起こっている(特に中国と比較して進化が止まってる事が実感が深い)ため、個人メモしておく

(日本勢は)複雑性軽減手段である市場・製品構造・生産及びR&Dシステムの抽象度の不連続的な増長の衝撃に不感応のまま、新次元の競争に旧来事業・組織戦略で対応し続けた。


デジタル化とは、あらゆる事柄を自動化する(automate)、あらゆる事柄を一目瞭然化する(informate)の二つである。ただ、前者はポリュラーであるが、後者こそ本質的である。
なぜかというと、informateによって、
部分と全体の関係や部分間の代替・補完関係が、大勢の人々に高い解像度でみえるようになる。つもり、メタ認知の大衆化が起こる。
今流行りのBig dataやAIやDeep Learningなどの基礎技術は、つまり最新のinformateの手段であるね。

深い階層構造を持つ旧来の垂直統合型企業では、トップダウン方式で情報伝達速度は速いが、情報混雑が発生しやすいボトムアップ方式での伝達速度が遅くなる。 このままでは、自律分散型システムの優位性がさらに急拡大していく中、特定アーキテクチャー内でのスペック探索のみならず、アーキテクチャー探索自体も迅速かつ適切に行えるはずがない。


モジュール・システムアーキテクチャーとしてのTPS(トヨタ生産方式)の本質の把握と実践
は、informateの一つの手段である。

巨大投資しなければならないために「待ち戦略」と今が旬戦略(Time to Market)が矛盾である。なので、リアル・オプション(real options、意思決定の選択権や自由度)を出来るだけ残していく戦略の有用性がある。 リアル・オプションが豊富になればなるほど、大勢の人々が、現実に起きている様々な現象を簡単に、しかも豊かな表現で文脈化(contextualization)できるようになる。 TPSは、リアル・オプション戦略実行のための基本原則を教えてくれる。