中国東方航空A319、沖縄那覇空港の滑走路に誤進入事件
2012年7月5日,中国東方航空のA319(機体記号B2332、便名2046)が、沖縄・那覇空港の滑走路へ誤進入した件
最終進入中の日本エアアジアのA320(機体記号JA01AJ)による复飞(ゴーアラウンド)を引き起こした事故についてまとめました。
5月28日、日本国土交通省が調査報告書を発表したので、簡単に記録しておきます。
詳細な報告書はこちら(全33ページ、さほど長くないので、すぐに読み終わります)。
当時のATC交信記録
| 時刻 | 内容 |
|---|---|
| 13:22:56 | 塔台(タワー)が日本エアアジアA320に対し、滑走路18への着陸許可を発行 |
| 23:23 | 塔台が中国東方航空A319に対し「Hold short of Runway One Eight. Report when ready.」を指示 |
| 23:30 | 中国東方航空が「[Line up and wait, ] Runway One Eight, report ready.」と返信(音声は不明瞭)。この時点で日本エアアジアA320は滑走路末端から3.5海里、高度1090フィート |
| 23:50 | 中国東方航空A319が停止標識帯を通過。日本エアアジアA320は滑走路末端から2.7海里、高度920フィート |
| 23:58 | 中国東方航空A319が滑走路18へ進入、左旋回しながら塔台へ「Ready」と報告 |
| 24:01 | 塔台が中国東方航空A319へ「standby」を指示。同時に日本エアアジアA320へ复飞を指示。この時点で日本エアアジアA320は滑走路末端から2.1海里 |
| 24:12 | 塔台が中国東方航空A319へ「hold position」を指示 |
調査結果による事実関係
中国東方航空パイロットへの聴取結果
- 当時、副操縦士が機長席(PF)に座り、機長は右側(PM)に搭乗。後部にはもう一名のパイロットがATC通信を担当。
- 塔台へ周波数を切り替えた時点で、日本エアアジアA320との交信は既に終了しており、降下中の機の存在を知らなかった。
- 3名のパイロット全員が塔台の「Hold short of Runway」を「Line up and wait」と聞き間違え、誰も違和感を抱かなかった。
- 着陸灯を点灯したA320の接近に気づかなかった。
塔台管制官への聴取結果
- ヘッドセットを装着せず、手に持っていた。
- 中国東方航空機を発見したのはE0へ誘導路を曲がった時で、距離があったため発見が遅れた。
- 外国航空会社であるため「Report when ready」を追加したが、返答は不明瞭で、問題ないと判断した。
報告書による原因分析
- 管制環境の問題:管制官がヘッドセットを装着しておらず、スピーカーから聞こえた返答に地上管制の通信が混入した可能性。また、マイクに直接息が当たりノイズが生じた可能性。
- パイロットの発音:中国東方航空パイロットの発音が不明瞭だった。
- 誤解:管制官がパイロットの返答を誤って理解した。
改善策
中国東方航空の対応
- 乗員の英語能力に応じた配置調整
- 各国のATC英語の特徴を技術分析
- 管制指令に不明確点がある場合、厳格な手順に従い盲従しないことの徹底
国土交通省の対応
- 塔台からE0・E1が遠いことを踏まえ、RWSL(Runway Status Lights)を導入。
- RWSLは誤進入や誤った滑走路進入に対し、点滅する赤色灯で視覚的に警告。
- 多元静的関連監視システムとレーダーで自動的に航空機の位置を測定。
那覇空港の対応
- 滑走路前待機機へ、他機の離着陸情報と理由を可能な限り通知
- ヘッドセットの着用を徹底し、マイクへの息当たりによるノイズを防止
- 二者による相互チェック体制を導入し、誤判断を防止
感想
音声だけのやり取りでは、理解の齟齬が生じやすいことが改めて明らかになった。道路交通信号のような視覚的補助があれば、相互誤解の確率は大幅に低下するだろう。