フライトシミュレーター愛好家のノート

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スリップとスキッドという2種類の横滑り

slipとskidの訳語について slip/skidはどちらも「側滑」と訳されることがありますが、具体的な違いは何でしょうか? まとめてみましょう。

モータースポーツを観戦すると、ドライバーがコーナーでスリップ(横滑り)を使っている場面をよく見かけます。 意図的に車体を横に滑らせ、素早く方向転換を行うためです。 (一般的に、スリップとはオーバーステアやドリフト状態を指します。例えば、ハンドルを30度切れば曲がるはずの車が、実際には40度も曲がってしまうような状態です。)

航空力学の観点から見てみましょう。例えば、機体を右に旋回させるために操縦輪を時計回りに回します。 すると左側のエルロンが下がり、右側のエルロンが上がります。これにより左翼の揚力が右翼より大きくなり、機体は縦軸を中心に時計回りにロール(roll)して、針路は右に変わります。 しかし、このとき下がった左側のエルロンが生み出す抗力によって、機体には「アドバース・ヨー(adverse yaw)」と呼ばれる逆方向の偏航が発生します。 その結果、機首が意図した方向とは逆の左方向へ向き、旋回レートが低下し、効率も悪くなります。

この現象が「slip」です。現象としては一種の側滑です。機体が正面の気流に正対していないため、いわば斜めに飛んでいる、あるいは横を向いて飛んでいる状態で、カニが横歩きしているような姿です。

アドバース・ヨーを修正するには、右側のラダーペダルを踏み、機首を垂直軸を中心に右方向へヨーさせる必要があります。 しかし、この修正量が大きすぎると、機体の側滑量が必要以上に大きくなってしまいます。 この現象が「skid」です。先ほどのレーサーが意図的に行ったスリップの例を思い浮かべると、覚えやすいでしょう。 skidはslipよりも危険です。失速速度に近い状態でskidになると、低い方の翼が高い方の翼よりも先に失速し、スピラル(スピン)に発展するリスクが高まるからです。 一方、slipでは高い方の翼が先に失速するため、バンク角は小さくなり、失速の可能性も低くなります。

slipとskidの問題点は、抗力がエネルギーを消費し、揚力を低下させてしまうことです。 初心者パイロットは、旋回中にラダー操作をうまく行えず、slipに陥りがちです。 また、強風の中で上昇する際にもslipが発生しやすく、上昇性能が低下するため、障害物を回避しなければならない場面では特に危険です。 slipもskidも起こさない完璧な状態が「Coordinated flight(協調された飛行)」であり、この状態でこそ揚抗比(L/D ratio)が最大化します。

上の図で、左側の飛行機はslipの状態にあります。これはバンク角が大きすぎるか、あるいはヨーが不足しているために起こります。 機体の軌跡が内側に偏るため、ターンコーディネーターのボールが左に寄っています。 一方、右側の飛行機はskidの状態にあります。これはバンク角が小さすぎるか、あるいはヨーが大きすぎるために起こります。 機体の軌跡が外側に偏るため、ターンコーディネーターのボールが右に寄っています。

slipが役立つ良い例として、風に流されないように機体と針路の間に偏流角をつける横風飛行があります。 また、ショートフィールド・ランディング(短距離離着陸場への着陸)では、slipを利用して抗力を増し、障害物を回避しつつ短い滑走路に降りる目的で使われます。 着陸進入時に出力を絞った状態で、反対方向のラダーとエルロンを操作する、いわゆる「クロス操縦」を行うことで、理想的なslipの効果が得られます。

クロス操縦を利用してslipに入る手法は、フォワード・スリップ(forward-slip)とサイド・スリップ(sideslip)の2つに分けられます。 両者の状態は似ていますが、slipを入れる目的が異なり、対地航跡と針路も異なります。

フォワード・スリップは、通常アプローチ中に高度を素早く下げるために使われます。(スポイラーがない小型機では特に有効です) 元の飛行経路を維持したまま、速度を増やさずに高度を下げることができます。 針路が横に向くため、正面から見ると、機体の進行方向と機首の方向に角度が生じます。 滑走路に近づくにつれて、タッチダウンの前にはフォワード・スリップの針路を滑走路の方向に合わせ、機輪を真っ直ぐにする必要があります。 (この時、横風がある場合には、以下で説明するサイド・スリップの操作も必要になります。)

サイド・スリップは、機体を傾けた状態で行い、主に横風の状況でのフレアや着陸操作に使われます。 フォワード・スリップとの違いは、針路がサイド・スリップに入る前と同じに保たれる点です。 つまり、縦軸は元の針路と平行に保ちますが、対地航跡は変化します。 左右の翼が高さ違いになるため、機体は低い翼の方向へ横に滑るような成分を持ちます。 サイド・スリップの操作を開始する際、パイロットはまず風上側にロールし、ラダーを使って針路を滑走路のセンター線に保ちます。 これにより、風上側の車輪が先に接地することになります。

“Coordinated flight"状態にあるボールの表示 Turn and Slip indicator

Turn coordinator