旅客機の操縦探秘4.1 ナビゲーションの基礎知識
巡航段階に入ると、パイロットは少しホッとして、離陸以来の緊張を解くことができます。 客室乗務員もコックピットにコーヒーなどの飲み物を提供してくれます。機内は乾燥しているので、パイロットも時々水分補給をする必要があるからです。
彼らが休憩している間に、私たちも少し立ち止まって、離陸からここまでの道のりを振り返ってみましょう。
JAS115便を例に挙げて、まずは航路図とNAVIGATION LOG(ナビゲーションログ)を見てみましょう。

この機が選択したナビゲーション航路は、標準出発儀式進路(SID)、木更津KZE、守谷SNE、那須NZE、 山形KAEDEウェイポイント、PEONYウェイポイント、野辺地MWEウェイポイント、海上のNAUERウェイポイント、そして北海道の千歳CHEです。 機は基本的にY11航空路に沿って飛行し、離陸から守谷SNEまでの累計飛行距離は約50海里、 巡航段階まで上昇する那須NZEまでの累計飛行距離は約100海里(160キロメートル)、高度は40,000フィート(12,000メートル)に達し、所要時間は約16分です。以下の図の通りです。
ナビゲーションではVORやDMEなどの航空用語がよく使われますので、以下で簡単に説明します。
VOR(Very High Frequency Omni-directional Range:VHF全方向式無線標識)は、航空用の無線ナビゲーションシステムです。その動作周波数帯は108.00 MHzから117.95 MHzのVHF(超短波)帯であり、それゆえにこの名前で呼ばれます。 VORシステムは1949年に国際民間航空機関(ICAO)によって国際標準の無線航行設備として承認され、現在広く使用されている陸上ベースの近距離測角システムの一つです。 VOR送信機から送信される信号には2種類あります:一つは位相が固定された基準信号、もう一つはビーコン局を中心とした円周の角度に連続的に変化する位相を持つ信号です。つまり、各角度から発射される信号の位相はすべて異なります。 360度(磁北を指す)に発射される信号は基準信号と同相(位相差0)であり、180度(磁南を指す)に発射される信号は基準信号との位相差が180度です。 航空機に搭載されたVOR受信機は、受信した2つの信号の位相差に基づいて、自機がビーコン局のどの角度から発射された信号上にいるかを計算することができ、これにより航空機はVORを使用してVOR局に対する方位を知ることができます。
VORは通常、測距儀(DME:Distance Measurement Equipment)と同じ場所に設置されており、VOR-DME局と呼ばれます。 これにより、航空機に対して方向情報を提供すると同時に、ナビゲーション局までの距離情報も提供されるため、航空機の位置を一意に特定することができます。
以下は大阪国際空港内にあるVOR/DME局の写真です。コードサインはOWE、周波数は113.9MHzです。大阪空滑走路32Lの外側から私が撮影しました。

航路図上では、VORは目盛りの付いた円で表され、その横に四角い枠で名称、周波数、識別コードなどの情報が記載されています。
以下はSkyVectorウェブサイトのスクリーンショットで、中央にある大阪OSAKA OWEナビゲーション局の情報を見ることができます。
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上の図の右上にあるOTSU局、コードサインCUE、周波数117.1MHzを見てみましょう。 この局を通っていくつかの航空路が交差していることがわかります。各航空路には081、087、108などの数字がありますが、 これらはVORラジアル(Radial)と呼ばれ、通常はR-081やR-087のように記されます。 R-081は、このラジアルがそのVOR局の磁北に対して81度の角度であることを示し、R-087は87度の角度であることを示します。
航空機はあらかじめ入力された航空路に沿って自動ナビゲーションで飛行しており、パイロットはND(航法表示器)で現在の位置や各ナビゲーション局、ウェイポイントの情報を確認でき、非常に一目瞭然です。
以下はボーイング777型機のマップモード時の表示例です。
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図の中央下にある三角形のAIRPLANE SYMBOLは機自身のマークです。 ジグザグの実線のROUTE線はFMS(フライトマネジメントシステム)で設定された航路であり、航路上の星型マークはウェイポイントです。 破線のSELECTED TRACKは、オートパイロットパネル(MCP)で設定した針路を示しており、90度方向を指しています。
図の真上の四角い枠内のCURRENT TRACKの数字は、現在の機の針路が140度(磁北に対して)であることを示しています。 一方、横のTRKとマークされた三角形のCURRENT HEADINGは機首方向を示しており、135度になっています。 この2つのデータは、機の進行方向が機首の向いている方向と等しくないことを示しています。これは風の影響を受けているためです。 フライトマネジメントシステムコンピュータ(FMS)は、機の進行方向が真っ直ぐ進むように、機首を風上に少し向けるよう指示しています。この2つの角度の差は、3.5節で述べた風修正角(WCA:Wind Correction Angle)です。
画面の右上には次のウェイポイントへの情報が表示されています。図のように、現在アクティブな次のウェイポイントはGRHで、 8時38分に到着予定、現在の機からそこまでの距離は32.5海里です。
画面の左上には速度関連の情報があります。GS338は対地速度(GROUND SPEED)が338ノットであることを示し、 TAS326は真対気速度(TRUE AIRSPEED)が326ノットであることを示しています。 その下の336度/11は風向きが336度、風速が11ノットであることを示しています。 さらにその下の矢印が風向きを指しており、これを見ると現在、機はほぼ真後ろからの順風(追い風)の状態にあるため、対地速度が対気速度よりも速いことがわかります。
画面の左右下にはNAV1とNAV2という2つのナビゲーションチャンネルの設定が表示されています。左側のVOR Lは周波数116.2MHzに選択されており、DME距離は121海里、 右側のVOR RはELNナビゲーション局(GRHウェイポイントの下方に位置)に選択されており、DME距離は28.5海里です。 画面上方の円弧の中にLEFTとRIGHTのVOR/ADF POINTER HEAD(VOR/ADF方位指示針)が見えます。これはVOR局に対する航空機の方向を示す針で、矢印の方向がその局を指しています。(図面では左右の表示が間違っており、逆になっていることに注意してください)。 これを見ると、左側のVORは機の97度方向、右側のVORは173度方向にあることがわかります。 以上のことから、航図上のVORラジアル方向に基づいて、機は航路のウェイポイントを一つずつ追って進むことができます。 以下の図は、機が同時に2つのVOR局を追跡し、そのデータの変化に基づいて現在の方位を絶えず補正している様子を示した模式図です。
VORアンテナはボーイング777の垂直尾翼の上にあり、フェアリングの中にあるため外から直接見ることはできませんが、その形状は以下の図を参考にしてください。
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次に、777のCDUでVORを設定する画面の図を紹介します。
NAV RADボタンを押すと設定画面が表示されます。VORナビゲーション機器の設定は1行目と2行目にあります。
左側がVOR Lの設定、右側がVOR Rの設定です。
1行目にはVORのコードサインと周波数が表示され、2行目のRADIALには必要なラジアルの角度値が表示されます。
2行目のCRSはILS(計器着陸システム)を使用する際のコース(進入角度)です。これはまた後で説明します。
ちなみに、3行目のADF(Automatic Direction Finder:自動方向探知機)も非常にシンプルなナビゲーション機器で、NDB(Non Directional Beacon:無指向性無線標識)がどの方向にあるかを指示することができます。 NDBはシンプルな無線送信機です。NDB信号には方位データが含まれているため、ADFは自動的にその方向を見つけ出し、 計器には機首がNDB局を指す方向が表示されます。
完
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